下記のような、生殖医療や不妊治療に必要なプラスチック成形品や、ヒトの細胞や遺伝子を取り扱うプラスチック成形品のご相談を、当サイトを運営する親和工業株式会社では数多くご相談を承っております。
- 細胞培養容器
- ウェルプレート
- クライオチューブ
- 細胞凍結保存用バイアル
- 卵子凍結保存容器
- 精液保存容器・採精容器
- スピンカラム
- キュベット電極
- 膣洗浄器
- シリンジ法キット
- PCR検査容器
- 採血デバイス
- 血液検査キット
- アレルギー検査キット 等
これらのような医療用プラスチック成形品を製造するには、①ヌクレアーゼフリーと②エンドトキシンフリーという、大きく2つのDNAフリーの状態が求められます。今回は、2つのDNAフリーについて徹底解説いたします。
①ヌクレアーゼフリー
まずはヌクレアーゼフリーについてです。
DNaseフリー・RNaseフリーとは?
DNaseとは、DNA(デオキシリボ核酸)を分解する酵素であるデオキシリボヌクレアーゼを意味しており、RNaseとはRNA(リボ核酸)を分解する酵素であるリボヌクレアーゼを意味しています。つまり、DNaseフリー・RNaseフリーとは、それぞれDNA・RNAの分解酵素がフリー(付着、混入していない)であることの総称です。
DNaseやRNaseはあらゆる場所に存在しているため、DNA・RNAを扱う実験などで使用されるチップ、チューブ、水や試薬、実験室内部の器具、装置などは、対象となる核酸が分解されないようにするために、すべてDNase/RNaseフリーの状態でなければなりません。当然、DNase/RNaseフリーの製品を作る施設内も、DNase/RNaseフリーである必要があります。
ヌクレアーゼフリーとは?
このDNase/RNaseどちらも付着・混入していない、ヌクレアーゼ(核酸分解酵素)が付着・混入していない状態のことを、総称してヌクレアーゼフリーと言います。
ヌクレアーゼフリーは、分子生物学、遺伝子工学、診断検査のための試薬、器具、溶液などが対象となります。ヌクレアーゼはDNAやRNAを分解するため、分子生物学や遺伝子工学の実験、診断検査において核酸の分解を防ぐことが重要です。ヌクレアーゼが混入すると、実験結果や診断結果が不正確になる恐れがあるため、ヌクレアーゼフリーが求められます。
②エンドトキシンフリー
続いて、エンドトキシンフリーについてです。こちらはヌクレアーゼフリーと比較してやや煩雑になります。
エンドトキシンとは?
エンドトキシンとは、グラム陰性菌(大腸菌や赤痢菌、サルモネラ菌、レジオネラ菌、その他にも多数の種類があります。)の細胞壁を構成しているリポ多糖(リポポリサッカライド 通称LPSと呼びます。)のことで、日本語では内毒素と呼ばれています。
グラム陰性菌が生きている間には増殖時(細胞分裂時)に少量が、菌が死んだり破壊されると、細胞壁から大量に分離し、人体に様々な問題を引き起こします。なお、細菌が生きている間、生存活動を行うために放出する毒素のことはエキソトキシン(日本語では外毒素)と呼びます。
エンドトキシンを除去、または失活させるのは大変困難で、250度以上の高温で30分以上の加熱が必要となります。エンドトキシンはグラム陰性菌がいる場所には常に存在しており、例えば我々が普段口にする食べ物や飲み物の中にも大量のエンドトキシンが含まれていると言われています。(調理によってグラム陰性菌が死滅しても、エンドトキシンは失活しない為。)しかし、食べ物に含まれるエンドトキシンは、人体の健康状態や摂取した量にもよりますが、腸のバリヤ機能により、体内へはほとんど吸収されず、また、吸収された場合でも少量であれば肝臓で分解され、無毒化されると言われています。
一方、傷口などから、体内に直接エンドトキシンが大量に入り込むと、敗血症などを引き起こしてしまい、最悪は死に至ります。そのため、体内に直接装着する医療機器や、注入する医薬品、薬剤や研究試薬を使用する製品は、エンドトキシンフリーであることが必要になります。
パイロジェンフリーとエンドトキシンフリーの違い
パイロジェンとエンドトキシンが同義語のように使用されることがありますが、エンドトキシンはパイロジェンの一部であり、厳密には同じではありません。またパイロジェンフリーの方がエンドトキシンフリーよりもさまざまな発熱物質を含んでおらず、外因性発熱物質で不活化が最も難しいのがエンドトキシンです。そのため、エンドトキシンを不活化させれば、他の毒素は不活化できる、つまりエンドトキシンフリーであるならばパイロジェンフリーである、と言えます。
もう1つのフリー:セルフリーDNA
DNAフリーは、特定の物質(ヌクレアーゼやエンドトキシン)がフリーな状態なことを指します。その一方で、「セルフリーDNA」という別の言葉も存在し、複雑に見える要因の1つになっています。
セルフリーDNAとは?
セルフリーDNA(cell Free DNA , cfDNA)とは、ヒトの血液中に存在する遊離DNAのことです。ヒトの血液中に166bp, 332bp, 498bpといった大きさで存在している遊離DNAであるセルフリーDNAですが、これは免疫に破壊されたり、アポトーシス(自ら細胞死、プログラム細胞死)やネクローシス(細胞死)した細胞に由来したDNAが血液・血漿中に放出されたものだと考えられています。
セルフリーDNAは健常者にも存在しますが、血漿や血清中のcfDNA濃度は低く、がん患者や妊婦、その他ケガや何らかの原因で組織損傷の際には、血中のcfDNA濃度は上昇します。特に様々ながんの腫瘍から発せられる、血液循環腫瘍DNAであるctDNAがセルフリーDNAに含まれていることが明らかになってきています。
血液循環腫瘍(ctDNA)は、正確には”circulating tumor DNA”と呼ばれます。健常者にもセルフリーDNA(遊離DNA)が血中に存在しますが、これは主に血球系細胞が死滅したことが原因とされるDNA断片です。一方でがん患者の場合は、がんの発生によって、アポトーシス(自ら細胞死)した細胞や、免疫によって破壊されたがん細胞、血中に漏れ出した循環腫瘍細胞(CTC)が、セルフリーDNAの一部にがん細胞由来の遊離DNAとしてctDNAが混在するということが明らかになっています。
しかし、血液中に含まれるセルフリーDNAは、全身の細胞とがん細胞の数の関係を表したものと考えることができるのですが、がん由来であるctDNAの数は非常に微量であり、セルフリーDNAのうち1%以下とされています。また、がんが初期段階のステージであれば、腫瘍組織の大きさも小さくなり、遊離するctDNAの数も少なくなるため、ctDNAの検出が非常に困難となります。
ただctDNAは、その他の血中サンプルよりもがんの進行度や治療効果を比較的精度高く反映していると考えられているため、がん検査や早期発見、治療効果のモニタリング、再発などの予測にもctDNAは有効であるとされています。またctDNAは患者個人のDNA情報も含まれているため、治療方針の決定といった個別化医療への活用も期待されています。
そのため近年では、血中の微量のセルフリーDNAを抽出、増幅、解析し測定することで、医療の幅広い分野でバイオマーカー(生物指標化合物)として研究する動きが広がっています。現在は、がんの検査には手術検体や組織採取などの生体検査(バイオプシー)を行っています。しかしこのバイオプシーという方法は、患者さんにとって負担は少なくありません。そこで比較的容易に採取できる血液からセルフリーDNAの測定・解析をする医療技術である、リキッドバイオプシーの研究が進められています。
リキッドバイオプシーとは?
リキッドバイオプシーとは、英語では”liquid biopsy”と書きますが、血液などの体液サンプルを用いて、生体検査を行う技術です。
液体のことをliquidと言いますが、ここでいう液体は、下記のような体液を指します。
- 血液
- 尿
- 唾液
- 脳脊髄液
- 心嚢膵
- 胸水
- 腹水
- 便 など
従来のがん医療では、内視鏡を使って腫瘍組織の採取、または手術で実際に切除した腫瘍組織を用いた生体検査(バイオプシー:biopsy)によって、がん細胞の遺伝子情報を確認する必要がありました。しかしこの場合、身体に大きな負荷をかけることになります。
しかしリキッドバイオプシーでは、体液のみでがん細胞の遺伝子情報を検査することができるようになり、また繰り返し体液を取得しやすいのも大きなメリットとして働きます。このように、リキッドバイオプシーの技術によって、患者の身体に大きな負担をかけることなく、がんの遺伝子情報解析や、がん治療の経過観察をすることができるようになります。そのためリキッドバイオプシーは、がんの早期発見や予測に大きな効果を発揮する、非常に画期的な医療技術として、現在盛んに研究されています。その他にも、リキッドバイオプシーは産科診断の非侵襲的出生前検査(NIPT)や、移植モニタリングにおける臓器移植後の拒絶反応の検出、心血管疾患などの疾患モニタリングにも使用されています。
リキッドバイオプシーでは、おもに血液中に浮遊する、がん細胞から遊離した微粒子の検査・測定をします。ターゲットとなる微粒子としては、主に下記のようなものがあげられます。
① 循環腫瘍細胞:Circulating Tumor Cells(CTC):
② 循環遊離DNA:Cell-free DNA(cfDNA)
③ 循環腫瘍DNA:Circulating Tumor DNA(ctDNA)
④ 細胞外小胞:Extracellular vesicles(エクソソーム)
⑤ 循環遊離RNA:Cell-free RNA(cfRNA)
⑥ マイクロRNA:miRNA
現状のリキッドバイオプシーでは③のctDNAに注目が集まっていますが、将来は⑥のmiRNAが癌の超早期発見に寄与するとして期待されています。
セルフリーDNAの分析方法
セルフリーDNA(cfDNA)を分析する方法としては、次世代シーケンシング(NGS)や、リアルタイムPCRが挙げられます。
リアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)とは、DNAの特定の配列を増幅し、その過程をリアルタイムでモニタリングする技術です。通常のPCRと異なり、リアルタイムPCRはDNAの増幅をリアルタイムで定量的に測定することができます。この技術は、定量的PCR(qPCR)とも呼ばれ、分子生物学、遺伝子工学、医学の分野で広く利用されています。
親和工業だからこそ可能な、DNAフリーを保証する医療用プラスチック成形
当サイトを運用している親和工業株式会社では、クラス10,000のクリールーム、および、クリーンブース内で、成形から検査、包装、梱包までを行う事で、核酸を分解する酵素であるヌクレアーゼのコンタミを防止しております。RNase除去剤を含んだ洗浄剤を、クリーンルーム内で使用する装置・器具等に対して噴霧して、ヌクレアーゼフリーの環境を整備したクリーンルームにて医療用プラスチック品を成形しております。
ヌクレアーゼフリーの環境を構築している親和工業だからこそできるのが、遺伝子分析・解析に使用されるプラスチック成形品の製造です。当社では、ヌクレアーゼフリーのキュベット電極や、エンドトキシンフリーの容器製造も行っております。
>>ヌクレアーゼフリーに対応したキュベットの製造はできますか?
また親和工業では、ThermoFisher製のリアルタイムPCRシステム「QuantStudio® 5 」を導入しております。
このリアルタイムPCRシステムは、これ以上ない精度で品質保証をすることができる、世界最高峰のシステムです。試薬についても、ThermoFisher製の試薬を使用することができ、設備やシステムだけでなく、試薬も最高品質でラインナップしています。
同時に50検体の検査が可能で、当社で成形した医療用プラスチック製品のDNAフリー・RNase/DNaseフリーを保証いたします。
また当社では、検査後に独自の製品試験書をご提供いたします。
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『医療用プラスチック成形.com 』を運用する親和工業では、医療機器に使用されるプラスチック製品を常時、安心・安全な品質でお客様にご提供するために、社内にクラス10,000以下のクリーンルームを完備しています。当社のクリーンルームは高清浄度を実現するために3重のフィルター構造をとっています。
また当社では、クリーンルームを完備するだけでなく、平成29年に医療機器製造業登録証の取得、令和元年9月にISO13485の認証取得、そして令和2年にを第二種医療機器製造販売業許可を取得しました。
>>第二種医療機器製造販売業許可、医療機器製造業登録、およびISO13485の認証
このように親和工業では、これまで以上に医療業界向けのプラスチック成形品を、安心・安全にご提供する体制を整えています。近年では、DNase-free、RNase-free、エンドトキシンフリーの製品に対応し、放射線(ガンマ線、電子線)の照射による滅菌やEOG減菌にも対応しており、遺伝子治療や不妊治療向けの高精度医療機器の開発・設計・製造を行っており、各種特許も取得しております。
>>遺伝子解析・遺伝子治療用プラスチック成形品に関するよくある質問一覧
>>不妊治療向けの医療用プラスチック製品の開発ストーリーはこちら
さらに当社では、全国でも極少数しか取得していない特級プラスチック成形技能士を2名輩出しております。
医療機器製造業許可・ISO13485・医療機器製造販売業許可を取得し、クラス10,000のクリーンルームを持つ、安心・安全の生産工場にて、特級プラスチック成形技能士が各種VA/VE提案を行うことで、お客様の想いを形にして、日本・世界の医療業界に貢献してまいります。医療用プラスチック成形のことでお困りの方は、まずは医療用プラスチック成形.comを運営する親和工業株式会社までお気軽にご相談ください。



















